またも大雪、大分・留学生対象の絵巻すし教室
さて、今回は今年1月、大分県別府市の立命館アジア太平洋大学(以下,APU)で行われた“絵巻すし”教室のお話です。昨年に続き2回目のイベントで、恵方巻きシーズンに合わせ、海苔普及の一環として開催されました。私たち絵巻すし教室スタッフの他、九州・山口地区の海苔生産者団体で作る主催者側の九州地区漁連乾海苔共販協議会から各県漁連・漁協職員約20名も参加。海苔業界で普及中の“手まきごはん(焼海苔の上にご飯と冷蔵庫にある好きな具材を何でものせて巻いて食べるというもの)”も合わせて行われました。
ですが、この時期の仕事では一つ心配な事が・・・。そう、以前東京で実施した絵巻すし教室の時も大雪ですごい目に遭いましたが。APUは別府市郊外の標高が高い山の上。環境は抜群に良いのですが、傍を通る高速の大分自動車道は濃霧でも時々不通になるし、平地に積雪がなくてもここはダメだった、なんて事もしばしば。2〜3日前から「寒波が来るぞ、来るぞ。大雪が降るぞ」と、家人が天気予報を見ては脅すので、戦々恐々・・・。「予報が外れる事もあるし」と、思っていましたが、前日午後にはすでに、平地でも雪が降り始め、漁連・漁協職員は早めに現地入りした、との情報が入りました。私たち絵巻すし教室スタッフは、食材の調達やイベント当日朝に野菜を切ったり、茹でたりする作業があるため、九州管内で行う教室で前日から現地入りした事はありません。当日雪で会場に行けないなんて事になると大変です。今回は会場となる共催者のAPU生協に色々手配して貰ったところ、現地で食材の準備が出来るという確認が取れたため、急きょ前日の夕方から会場近くの宿泊先まで行くことになりました。
慌しく準備をして出発しましたが、、途中で日は暮れ、雪はどんどん激しく横殴りに降り、高速道路の路面にあっという間に積もり始めたのです。ハンドルを取られて車体はフラフラ滑るし、強風にもあおられ、車体は大きく揺れます。車の行く手、数メートル先までしか視界もきかず、同乗のスタッフも恐ろしくてシーン。日頃は“バア様暴走族”と呼ばれ、無謀運転の代表格のようなこの私が、「こりゃあヤバイぞ・・・」と、蒼くなりましたねぇ。この状態で高速道路が通れた事自体、不思議でしたが、その後すぐ不通になったそうで当たり前!危なかった!!恵方巻きの時期、これまで何度もこんな怖い目に遭っているので、この私が雨女ならぬ雪女じゃないか、と言われております。失礼な!!!まあ、確かに良くしゃべる口裂け女のごとき風貌はしておりますが、ババシャツ2枚、厚手のパッチに靴下3枚重ね履きしている寒がりの雪女なんているのかねぇ・・・。(笑)
翌朝は、ホテルから大学までの山道が積雪で登れなければ、講義が休講となり学生も来ないとの事。休講にでもなったら、昨日恐ろしい思いをして別府まで辿り着いた関係者の苦労は水の泡。祈るように車で登り始め、何とか無事到着。まずは、会場に着かなくちゃ何も出来ませんからね。本当にそれだけでホッとして「やったー!着いたー!良かったー!!」と、スタッフは大喜びでした。
ホッとしたのも束の間、すぐ準備です。昨年は、豚肉を食べないムスリム(イスラム教徒)の学生がいることを知らず、持参した具材ソーセージに豚肉が入っており、使えず慌てふためいた。その経験から、今年はチーズかまぼこを使用する事にしました。昨年もお世話になった生協担当者のチェックが入り、自信を持って「今年は大丈夫です」と、胸を張っていた私でしたが、にも関わらず、食品表示に書かれた“アミノ酸エキス”をご覧になって「これはダメ!使えない」と。「ええー!!エキスもだめ?!」。「原料に何が使ってあるか分からないから」との理由で、今年もまた、ムスリムの方用に羊肉ソ−セージが特別に準備されました。宗教上の戒律がこのように厳しいものかと思い知ると同時に、日本で忠実にそれを守る外国の若者に頭の下がる思いでした。まだ、日本語も良く理解できない留学当初は外食や市販の食品のチェックにも不便不自由を強いられている事でしょう。この年の私でさえ日頃、朝晩は仏壇に灯明、線香を上げ、チーンと鐘を打ち、仏教徒の体はしておりますが、年末はクリスマスに浮き足立ち、わずか1週間ほどして正月になるとお宮に参拝して拍手を打つ、と節操のない事をしています。私の考えは甘かった。反省、反省です。
準備を終え、絵巻すし教室は午後1時と3時の2回行いました。別会場ではお昼にかけ、
各漁連・漁協のスタッフがたくさんの具材を持ち込み、海苔と白飯の上に色々な食材をトッピングする“手まきごはん”を振舞い、大盛況だったそうです。でも、外は吹雪になるほど雪が降り、高速道路や一般道路の通行止め情報が次々と入ります。この時期は海苔入札のある繁忙期で各漁連・漁協職員は「今日は帰れないかも・・・」と心配顔。しかし、「何としてでも帰らなければ」と、情報収集をしていました。私は、と言うと、「帰れなかったら、あと一晩別府温泉タイ」「元気に参加してくれた学生さん達と絵巻すしを楽しく、きちんとやらなきゃ!」と、気合いを入れておりました。
参加者の中には、昨年も来ていた学生が何人もいました。会場に入るとすぐ、「キョネンモキマシタ」「マタヤリタカッタ」「タノシカッタ」「オイシカッタ」と声をかけてくれ、すごく嬉しかったです。絵巻すし教室での出会いはその時1度、その場限りのご縁の方がほとんどです。感想や意見等を伺う時間がない場合もあり、出来上がった絵巻すしをカットした時の嬉しそうな顔や歓声が私への評価だと思っています。こうやって1年後、また参加したいという評価を頂き、再会が叶うのは「ああ、良かった」と指導者冥利に尽きるというものです。その冥利に尽きるが故、更にヒートアップして筑後訛りの博多弁をまくし立てるのですが、学生達には「何のこつやら意味が分からんやっちょろや・・・」(笑)。
でもね、今回「梅の花」を作りましたが、出来は素晴らしかった!皆、巻きすしの経験がないので自己流を出しようもなく、素直に言われた通りに作りますからね。皆で見せ合いっこして、撮影会が始まり大盛り上がりでした。中に日本語の上手な学生がいて、「わぁ、すごーい!!短期間で(日本語)すごく上手になったね。何年生?」と聞いたら、「私、日本人です」って返事が返ってきて皆大爆笑!ほんとにもう、アタシったら何てドジ・・・。
2回目の教室が終了し、九州各県から集まってきた漁連・漁協職員と我々絵巻すしスタッフはとにかく、それぞれ住まいのある地域にそれぞれのルートで帰途に着きました。もちろん高速の大分自動車道、別府・日田間の一般道路はすでに通行止め。我々はやむなく、大分から北九州周りで会社や自宅のある福岡県朝倉郡を目指す事になりました。普通なら1時間半程度の道のりですが、運転を代わってあげる事もせず、ひたすら居眠り(もちろん、お仕事で疲れているからよ・・・)。4時間半もかかってようやく帰り着き、「飛行機で東京に行くより遠かった」などと、ホザく寒がりの雪女でした。では、また・・・。
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