干潟のつぶやき過去の履歴
2016.03.22掲載
熊本・「八代青のり」と商品を本格発売

 熊本県の八代漁業協同組合では、同市内に流れ込む日本3代急流の一つ「清流・球磨川」河口で生産される「青のり」(すじ青・いと青)の本格発売を行っている。
熊本県の「球磨川」は山形県の「最上川」、静岡県の「富士川」と並び称される日本三大急流の河川で、観光地として「球磨川・川下り」で知られている。しかし、球磨川の終着点は不知火海(八代湾)でありこの海域では海苔養殖も行われているが、河口域で生産されている「八代 青のり」は西日本では高知県の四万十川流域の青のり「四万十のり」と遜色のない製品であるが、熊本人気質旺盛な地域だけにあまり宣伝をしていなかった。しかし、健康食品、和食の風味付け産物が注目されており、本格的にPRして「八代 青のり」を拡販しようと家庭向けに5g入りの小袋製品を発売している。
商品は、青のりを手もみして味噌汁、冷や奴、温かいうどん、焼きそば、パスタ、お好み焼き、もんじゃ焼きなどのトッピングなど、汁物、焼き物の風味を引き立てる製品として好まれている。
また、八代青のりをメインにした明太子、唐辛子をまぶしたせんべい
「八代青のりめんべい」も発売しており、人気商品として売れ行きも伸びている。

 
 

熊本県の特色のある商品として本格的に販売を始めている。 問い合わせは次の通り。
〒866-0032 熊本県八代市新開町3−84 八代漁業協同組合
電話・0965−37−1757番
「熊本県 八代青のり」(5g)。「八代青のりめんべい」(2枚1袋×12袋)

2015.11.12掲載
◎海苔スープの「ラーメン」が生まれました

即席麺メーカーのサンポー食品梶i本社・佐賀県基山町・大石忠徳社長)は9月14日から、佐賀海苔の初摘みを使った「初摘み海苔スープラーメン」を発売しました。同社では地元佐賀産の食材を使った新たな商品開発に取り組でいますが、佐賀県有明海漁協をはじめ地元テレビ局、公益法人(さが農商工連携応援基金)などの支援により佐賀有明産の初摘み海苔を使用した、新発想の商品を完成させました。普通、ラーメンに使われる海苔といえば、ラーメン店での具材の一つとして、8分の1程度の大きさで、すぐにスープで溶けない様な固めのものが一般的。

新商品に使った海苔は、上品なチキンスープをベースにした鰹やイリコ、利尻産昆布などこだわりのダシとともに、スープ調味料の一つとして、口溶けの良い佐賀有明産の初摘み海苔(全形1.3枚分)を加えることにした。その結果、希少な一番摘みの香りや旨みを活かした"海苔が飲める"、画期的なスープを作ることに成功。そのため、海苔の入ったスープが飲み干せるようにと、塩分を控えめに仕上げる配慮もしている。
この海苔スープはサンポー食品の棒状ラーメンのスープとして煮込みますが、ラーメン丼の中で十分かき混ぜますと、トロミが出てきます。このとトロミは海苔の成分の1つでポリフィランという植物繊維です。肌にも良く、大腸がんの予防に重要な働きをします。さらに、海苔にはフコイダンという成分が含まれておりまして、抗がん作用もあります。

今までこのような優れもののスープが出て来ませんでしたが、海苔を素材にした新たな健康食品として食品メーカーと連携して新たな視点による開発食品が始めて生まれました。
 このラーメンは福岡県産のラーメン専用小麦「ラー麦」を使用しています。海苔ラーメンスープの制作については、佐賀市にあるチャイニーズレストラン「シャンリー」に佐賀県有明海漁協の参事がオーナーである立岡池敏シェフとともに考案した「のりスープそば」をヒントに作られたものですが、スープとの相性を考え、麺にはのどごしが良く、歯切れ、味の良い「ラー麦」を使用、こだわりの調味料や麺から出来た商品は、付加価値の高い差別化された食品になり、海苔の用途にも新たな可能性を与えてくれました。すでに、同社の通信販売をはじめ、「佐賀玉屋」や佐賀県有明海漁協の販売店「まえうみ」などで県産品のご当地商品として販売されていますが、珍しさもあり購買客の反応は上々ということです。同社では今後、高速道路のサービスエリアなどで九州ならではのお土産品として販路を拡大することにしています。今、東南アジアでは同社も作っている棒状ラーメンやとんこつラーメンなどの人気が高まっており、展開次第では海外への販路も望めそうです。

 "初摘み有明海産佐賀のり入り"と袋に書かれた新たな商品が出来上がると、海苔漁家にとっても手塩にかけた自慢のわが子が晴れ舞台に立つようで、なんとも誇らしげで、生産意欲を掻き立てられるようです。海苔業界にとって、新たな視点で企画されたこのような商品の開発が今まさに求められる。この商品に続く第2、第3の新商品の市場投入が待ち望まれます。
価格は1食袋500円(税別)。2食箱1,000円(税別)。
問合せは同社(電話・0942−92−2511番)まで。
2015.07.23掲載
◎「おにぎらず」

「おにぎらず」と言う面白いご飯の食べ方が流行っている。
平成3年に刊行された講談社発行の「モーニング」誌連載漫画「クッキングパパ」で紹介された「超簡単おにぎり おにぎらず」が起源であると言うことであるが、24年を経て、昨年秋頃から一般に広がり、アッと言う間に人気食品となって拡がった。海苔巻きおにぎりより簡単で、具材が自由に挟み込まれる楽しさと、海苔巻きご飯のサンドイッチのような食べ方が人気を呼んでいるのだろう。キャラベンの楽しさとは一味番った
「大人のキャラベン」と言った感覚と言えそうだ。
具材たっぷりで、栄養バランスも十分考えられる食べ方で「クッキングパパ」の作者「うえやまとち」さんも24年振りに巻き起こったブームに驚かれているのではなかろうか?。
この「おにぎらず」用の「海苔」も今年初めから大阪の加工海苔企業がいち早く取り入れておにぎりを作るときの塩加減をつけた
「おにぎらず用海苔」を発売した。

−業界でいち早く発売したおにぎらず用海苔−
包装紙におにぎらずの作り方などを写真印刷した斬新なデザインが好評だ
↓写真拡大

私の知る範囲では、大阪市、名古屋市、明石市、広島市の4社が販売しているが、売れ行きは良く「自社工場では製造が間に合わず、委託製造をお願いしている」ところもあるようだ。
最近の書店には、「おにぎらず」の単行本や料理雑誌の企画としていろいろな具材や作り方を紹介している。またホームページやブログで紹介しているところが多く、パソコンで「おにぎらず」を検索すると驚くほど多くの発信が行なわれている。さらに、「おにぎらず」を簡単に手を汚さず作れる
「おにぎらず作りの専用器具」まで発売されている。
板海苔(19cm×21cm)の中央に10cm四方、厚さ1cmのごはんを広げ、好きな具材をその上に広げ、そのうえに更にごはんを1cm程度被せて、海苔の四隅を折り曲げて包み込むようにすれば出来上がりと言う簡単さが受けている。しかも具材はカロリーや必要な栄養素のある好みの具材を入れれば良いわけで、非常に理にかなった「ごはんバーグ」が出来る。
海苔産業界にとっても、海苔1枚を十分活かしてもらうことが出来、切り刻んで小袋に包装する手間も経費も少なく、ありがたい需要の形である。海苔は
1日2枚(1枚約3グラム)食べれば、一日に必要な微量元素、栄養素を含んでいると言われ、一時期は「海苔は一日2枚食べましょう」と言った家庭需要促進のキャンペーンを海苔業界で行なっていたが。昨今は余り見かけなくなった。高齢者世帯にとっては有難い食べ方と思えるが如何なものだろうか?。

 この際、多くの家庭で手軽に栄養価のあるご飯の食べ方として海苔業界全体で普及活動を行なえば良いのだが、何事にも出足が遅く足並みが揃いにくい業界だけに、海苔業界にとって有難いブームである。ロング巻きすしなど保健所が眉をひそめるような行事を行なうより、より効率の良い活動になると思うのだが、こんな事を言っても低質品の安売り競争に明け暮れる業界の耳には届かないようだ。
2014.12.18掲載
◎侮れない「自然と旧暦」

 今年の気象は例年になく暖かい日が続いた。紅葉の盛りが11月下旬になった。12月に入って徳島県など思わぬ地区にドカ雪が降って、大変な事態になった。
この事象とは直接関係はないだろうが、例年、海苔を海上で養殖を始めるのは、
水温が24〜25℃程度の時期が良いように言われていた。九州でも20年頃前までは、その時期が10月初めに訪れていたが、近年は九州有明海の平均水温がこの時期でも1℃ほど高くなっているといわれる。
したがって、有明海の海苔漁場のように海中に支柱を建て、その支柱に海苔の種貝を海苔網に括りつけて自然の海中で海苔を育てる産地では、海水温の状態が大変重要である。今年は、暖かい日が続き、海水温が思うように下がらず海苔の種網を張り込む時期がやや遅くなった。
しかし、一刻でも早く海苔を生産したい海苔漁家のあせりも手伝って、10月中旬に種網を張り込んだ。その後も暖かい晴天が続き、海苔を育てるのに苦労が多かったようだ。12月中旬を迎ええようとする時期から、海の状態も良くなったが、10月中旬に張り込んだ海苔網の生産状態が思わしくないようだ。
今漁期の海苔生産のタイミングについて、一部のベテランは
「今年は閏9月だから、慌てないほうがいいと思うけど・・・」という声が聞かれた。閏9月の暦を見ると、旧暦の9月が新暦の9月24日に始まり11月21日まで続いた。旧暦の10月は11月22日から12月21日まで続く。
自然に生きる木々や植物の変化を見ていると、旧暦に忠実に沿って動いているような気がしてならない。昨今の生活は、旧暦に関係なく動いているから、気候の変化を「異常気象」としているが、
海苔も自然食品である。品種改良をしても遺伝子の根底には自然を感じ取る遺伝子が残っているのではなかろうか。

海苔産業界もこの数年来需要が下降している。生産を急ぐのも良いが、今年の海苔の出来具合は、あまり良くないようだ。このようなことをいうと、「時代遅れな奴だ」といわれそうであるが、自然食品を育てるのに、自然の動きを充分に見つめる必要があるようだ。そのためにも、旧暦をもう一度見直す必要がありそうだ。
2014.03.26掲載
◎日本一の海苔購買都市「千葉市」海苔問屋の取組み
「千葉市」が平成25年の海苔購買額日本一の都市になった。
1世帯当り年間購買額は4,656円で、平成22年から24年の平均購買額も 3,855円で日本一です。 これを、千葉県内に止めず、日本中にPRしようと、千葉県海苔問屋組合員で千葉市内の4社((有)鮎澤、(有)本田商店、(有)大野商店、樺J海苔店)が中心になり、「千葉海苔消費日本一実行委員会」を立ち上げました。

“千葉市 海苔 日本一”の幟や商品用ステッカーなどを4社の独自予算で作成して、地元のプロ野球チーム「千葉ロッテ」球場で来場者に海苔配布や千葉市のイベント「千葉城さくらまつり」などに参加出店しオリジナル商品の「焼そばのりロール」などを販売するなど“千葉県海苔”の良さを大いにPRしようと言うことです。
今年3月29日(土)から4月6日(日)まで開かれる「千葉城さくらまつり」開催中の
4月5日(土)に1日だけですが、「焼そばのりロール」を販売するそうです。

千葉市内の野球グランド入り口で「千葉のり」を無料配布

リーダーの鮎澤さんは「家計消費額が一番である事は、千葉海苔の需要をさらに伸ばすチャンスだと考えている。千葉海苔を食材の一つと考えた需要開発に取り組んで行きたい。地域の飲食業界にも協力頂き、千葉海苔を食材にしたメニュー開発をお願いしようと考えている」と幅広い活動を目指しています。
また、千葉県海苔問屋協同組合の飯塚真一理事長は「平成23年に千葉市の世帯当り海苔購買金額が日本一になり、これを機会に千葉海苔の消費拡大に力を入れようという事になり、活動を始めたが、今年で3年連続日本一の座を維持した事になり、今後ともこの状態を維持するように努力したい。これを機会に千葉産海苔の美味しさを全国にアピールして行きたい」と意欲満々です。
海苔の消費低迷と海苔漁家の減少が続く中で、海苔産業の将来を見据えた海苔産業界維持発展、後継者の育成が最も重要な時期です。
せめて、海苔生産県の主要都市だけでも、海苔購買額が全国上位に並ぶよう努力したいものです。そのためにも、千葉市の海苔業者の活動は注目に値します。お近くにお住みの方々も是非千葉市ののり販売店にお立ち寄り下さい。のりに関するご家庭でためになる情報も聞けると思います。
昨今、「地元グルメ」の紹介イベント「B1グルメ」という飲食物の全国大会が開かれて地方の美味しいものが紹介されて人気を呼んでいます。また、食品全般についても都市の消費金額が多いことがテレビなどに取り上げられて注目されることが多くなっています。

 そういう知られ方も一つの方法でしょうが、生産地の現場からも県内に誇れる産物として認知度を高める努力をすることが大切です。そう言うことが出来る生産・流通の体質を作り上げることも大切でしょう。
2013.09.19掲載
◎海苔産業界初、生・販の協同商品誕生

海苔産業界も消費低迷で、小売価格の販売競争が激しく、低質・低価格商品が大型小売店の店頭に並び始めてかなりの年月を経て来た。まだ海苔商品の価値が高かった時代は、特売のチラシに商品写真入で大きく取り上げられていたが、最近の特売チラシに海苔商品を見かけることが稀になった。
販売競争が生んだあげく、低質・低価格商品が出回るようになり、海苔の価値も落ちて、消費量が大きく落ち込んでいる。その影響で生産者価格も大きく落ち込み、低価格で売れ筋のおにぎりを中心に生産量を増やして売上を上げざるを得ない生産状態になっている。その結果、海苔養殖をあきらめる漁業者毎年100名以上にのぼり、この10年間で海苔養殖経営体は2,709(48.4%)も減少している。
この状態が続けば、海苔産業の将来に危惧を持つ人が多くなり始めている。そのような中で、
「美味しい海苔を作り、地元販売業者がおいしい商品を作って消費者に海苔の本当の味を知ってもらおう」という海苔消費促進の道を切り開きたいという生・販の意気投合による商品が生まれた。
熊本市河内町の漁業組合員の若手で組織している「のり研究会」のメンバーである。地元海苔養殖漁家の後継者を中心に組織されている海苔養殖についての研究会であるが、海苔販売業者の価格競争の中で低質、低価格の海苔が家庭用商品として多く販売されるようになり、上質のおいしいのりの販売量が減少している。その結果産地の入札価格にも大きな影響を与えて、収入減による海苔養殖漁家の減少が続いている。

その現状から抜け出そうと、熊本市の河内漁協塩屋地区17名ののり研究会のメンバーが「塩屋海苔のおいしさ伝え隊」をテーマに3年前からおいしい海苔作りに取組んだ。海苔商社の協力もあり、メンバーが作ったおいしい海苔を入札会で買い上げてもらった商社から買い戻し、各地で試食販売を行いながらさらにおいしい海苔つくりに研鑽を重ねたところ、地元熊本市の海苔菓子「風雅巻き」を製造販売している業者が価値ある価格で落札し、のり研究会メンバーが作った海苔として、グループの後継者9人のグループ写真を商品のラベルに使い販売している(写真)。
生・販協力が生んだ全国でも珍しいい商品である。
標準小売価格は、8切80枚(全形10枚分)750円
2013.08.01掲載
◎デザイン海苔?が現れた!
技術の進歩を見るのは興味深いもので、
焼き海苔にレーザー光線で図柄を描くことが出来るようになった。のりは海藻を2〜3ミリにきざみ19センチ×21センチの四角に抄き上げたもですが、1枚の重さは乾燥品で約3グラム。ごく薄い商品です。しかも、通常の紙とは違って、熱を加えると燃え易い性質があります。 その海苔にレーザー光線を当ててデザインどうりの図柄を焼きこむ技術が開発されました。
(↑上写真)は、去る6月25日(火)テレビ東京午後11時からのWBSの「トレンドたまご」コーナーで放送された場面ですが、鰹ャ善本店(本社東京・http://www.kozen.co.jp/)での製造風景です。このデザインは、番組のコーナーのタイトルをデザインにした物ですが、込み入ったデザインは、海苔を何枚も重ねてデザインの切抜きには難しいところもあるようです。 しかし、下の写真のようなメッセージを切り抜いたデザインも出来ます。
このようにメッセージを切り抜いたデザイン海苔は、いろいろな使い方があり、親しい人へのギフトや冠婚葬祭のギフトにも使えそうです。海苔の需要を拡げる素材の一つとして開発されたものですが、デザインはいろいろと広がりそうです。
小善本店では、
「おしゃれ手巻き」シリーズとして、すでに販売していますが、その種類は、花びら、ハート、お星さまのデザインを海苔一面に刻み込んだものや、大きなハートのラブラブおにぎり、海苔に鯉幟の絵柄を刻んだ鯉幟海苔などの種類があります。
小善本店のホームページでご覧になると一段と楽しさも増えます。
2013.3.11掲載
◎海苔企業から初の「海苔レシピ」本発刊

一般に開放している企業食堂のメニューが好評で、メニューのレシピが出版されて大いに人気を呼んだ(いや、呼んでいる)。企業食堂のメニューは社員の健康管理を任されている管理栄養士、栄養士、調理士が摂取カロリーを考えながら、おいしさとともに食材の経費を十分考えながら料理の種類とそのレシピを考えている。大変な作業である。
「会社の昼飯は美味いし安い」と婿殿に言われた家庭の食生活を管理する奥方や独身者にとっては、毎日の献立を考えるのが会社の実務より大変である。
このような便利なレシピ集が出来ると大変有難い。昨今は「弁当族」が増えたと言うことも聞くがなおさらである。
このような世俗に敏感な企業では負けじと、「レシピ集」の刊行に力を入れているが、食品のオーソリティーである食品メーカーが社内の商品開発部や企画部の創意工夫による
「企業レシピ」本も相次いで出版されている。
結構なことである。企業の宣伝ばかりでなく、女性の職場進出が多くなり、専業主婦が少なくなっているのと同時に家庭料理の内容を考えるわずらわしさから少しでも解放されて頂くことを考えれば、数億円の宣伝費を使うより大きな効果があること間違いない。
日頃から海苔産業に携わっているが、これまでに発行された企業レシピ本を購入しては、海苔を使用したレシピはないものかと探していた。いずれも80歳に近い海苔おたくから見ると、従来のものは洋食のレシピが殆どのような気がする。もちろん和食もあるが「和洋食風」といった印象になってしまう。
ところが、このほど東京・日本橋三越本店前の老舗海苔店・且R本海苔店から
「山本海苔店からの贈り物 毎日食べたい海苔レシピ」(徳間書店・税別・857円)というレシピ本が出版された。

レシピの内容は「春夏秋冬」の海苔を使った料理として相応しい内容にわけて編集してあるので、季節に合った海苔料理でもてなそうというという場合はさらに便利である。
このレシピ本の特徴として読ませる部分がある。入り口のページ20ページは海苔に関する知識でまとめてある。「そもそも海苔とは?」「びっくり!海苔の栄養学」「海苔ができるまで」そして「山本海苔はなぜおいしの?」という商品管理のPRも。
さらに、知ってビックリのコラムが季節ごとのレシピ集の最後に掲載してあるが、
「日本初のドライブスルー!?」は山本海苔店が昭和40年に日本橋の本店で始めたということです。いまはありませんが、「へェ〜!」という驚き。
もう一つ
「ギネス認定!CMの女王」というコラム。山本海苔店といえば「山本陽子さん」専属イメージモデルとしてテレビ、ポスターに登場されたのが1967年で、2009年に専属モデル契約世界最長記録(42年間)として、ギネス記録に認定されているということです。
いろいろな「知らなかったァ〜!?」というコラムも、海苔料理を作る間のコリほぐしになりそうな内容である。

赤地に梅の花をあしらった新書版サイズの112ページ。バッグに入れて持ち歩き、一息ついた時に目を通すのにも良さそうである。

2013.3.11掲載
◎のり産地ならではの風景を再現
昭和30年代の初め頃までは、全国ののり産地で見られた「手抄きのり」と「天日干し」の風景が再現されました。場所は、日本一ののり産地、九州の有明海に面した佐賀市の嘉瀬町。
佐賀県有明海漁業協同組合佐賀市支所の有志が取組んだものですが、早朝の陽射しに映える碁盤目模様ののり干し棚が並んだ風景には、近所の長老達が足を止めて「なつかしか風景バ見せてもろた」と佇んでいました。


のりを慈(いつく)しむ心を育てよう
平成24年11月21日午前7時、空一杯にうす雲が被い、薄日の射すひんやりした朝でした。佐賀県有明海漁協佐賀市支所の組合員が次々と現れました。のり養殖に取組んでいるのり作りのプロたちです。20歳代から50歳代の若者達に混じって60〜70歳代のおやじさんの姿も見えます。
午前7時過ぎ、集まった約20名の「のり師」たちが「始めましょうか−」と声を掛け合って、「手抄きのり」の作業場にしつらえた、のり種苗の培養場に入りました。
「子供のころ、見たことがあるもんネ」と60歳代の先輩が声をかけるなか、70歳代の先輩のり師が「久し振りバイ」とのり抄きの手はずを指示します。 テキパキと指示に従って、作業準備が整えられて行きます。
しかし、大変手間のかかる仕事です。労力が要る非効率な作業ですが、あえて「手抄き、天日干し」ののり作りに取組んだのか、佐賀県有明海漁協佐賀市支所の杉町省次郎運営委員長(旧役職名称・組合長)は「海苔養殖の技術も生産工程も学術的で機械化され、増産体制が出来て作業工程も合理化されています。しかし、のりは天産物であることに変わりはありません。海苔が育つ海の環境によっておいしくなります。そのように育てるのが海苔養殖漁業者の役目です。機械化されて増産出来る状態になると、“のりを育てる”というより“製造する”という感覚になりがちです。“のりを育てる”ことの難しさ、楽しさを肌身で感じることも、のり養殖漁業者として重要なことです。そのためにも養殖技術が進んだのり作りで育ったのりが、どのようなものであるのかを手抄きによって感じることも大切ではなかろうかと思って取組んでみました−」と語り
「のり生産地の産業遺産として、手抄きのりの技術とのりを慈しむ心を忘れないように後継者に引き継いでもらいたい」とも語っていました。
《のり抄き作業》
@四角の木作りの枠(19センチと21センチの大きさ)をのりミスの上に置き、ミンチしたのりを約2合入る手桶ですくい、木枠の内側にのりを広げるように流します。抄き終わったところで、ミスの上からスポンジでのりを押さえて脱水します。
A抄き上がり脱水したのりは、ミスごと天日干し用の木枠の棚に引っ掛けて並べます。1枠に12枚ののりが掛けられます。そのまま外の日の当るのり干し場の棚に立て掛けて並べて行きます。
B杖代わりの乳母車を押しながら通り掛かった近所のおばあさんは、棚に並んだ天日干しの風景を見ながら「なつかしか〜」と立ち止まって眺め、のりに近づいて「よう抄けとる−」と呟いていました。若い頃の手抄き風景を想い出されたようでした。
C 干し場にのりが並び始めて1時間ほど経った頃「ピッ、ピシッ」という音が聞こえ始めました。のりが乾いてミスからはがれる音です。この音を「のりが鳴く」と言います。テレビカメラマンもこの音がどのようにして鳴るのか、熱心にカメラを向けて追い続けていました
D乾いたのりを1枚づつのりミスから丁寧に剥がします。破かないように要領良く剥がすのも年期がいります。 お手伝いの漁協婦人部の方たちも、手馴れるまでは無口でした。しかし、手付きが慣れてくると「パリッ、サッ」とリズムが聞こえてきます。
Eこの日に出来上がったのりは、約2千枚でした。しかし、中には剥がしに失敗して破けたものもありましたが、「焼きのり」に商品化されたものは、1千4百枚でした。
今時珍しい「手抄き 天日干し」の焼海苔として販売されたようです。毎年のり産地の「食文化遺産」として残して行くそうです。
2012.10.29掲載

◎有明海で新海苔養殖始まる

今年も新海苔養殖が始まる時期を迎えました。九州の有明海は全国の約半分を生産する大きな産地です。 その有明海で、10月16日から新海苔の採苗(のり種を海苔網に付着させる作業)が始まりました。有明海の採苗方法は、前回ご紹介しました宮城県や千葉県、瀬戸内海一帯の海苔産地とは違った方法で行います。
有明海以外の多くの産地では、大きな鉄輪(通称・水車)の海苔網を巻きつけて、水槽に入れた海苔種が潜り込んだカキ殻から海苔種が水槽に張られた海水の中に飛び出してきたところを海苔網を巻きつけた水車を回転させながら海苔網に付着させる方法ですが、有明海では、海苔網を30枚ほど重ねて一番下の網にビニール袋に海苔種が潜り込んだカキ殻を入れて、ぶら下げて海中に海苔網を張込み、自然に海苔種を海苔網に付着させる方法です。
このような方法の採苗を
「野外採苗」と呼んでいます。大きな鉄輪の水車に海苔網を巻きつけて水槽につけて採苗する方法は、「室内採苗」「陸上採苗」と言っています。
室内・陸上採苗の場合は、海苔種がついた網を一旦冷蔵庫に入れて海の状態が海苔網を張り込むのに適した水温(おおむね22℃以下の水温)になった時に海に張込んだり、水温が冷え始めた時に種付けをした海苔網を一旦海中に張りこみ、芽付の状態を確認して海中から引き揚げて冷蔵庫に入れて、海況が海苔の育苗に適するようになってから、本格的に海に張りこみ海苔芽を育てる方法などがあります。

 全国の産地で順次海苔網が海上に張りこまれて行きますが、張込まれた海苔網から、新海苔を摘み始めるのは、宮城県の早い地区で11月始め頃になるでしょう。
有明海で海苔網が張込まれた海苔網からは、
11月中旬過ぎから海苔摘み作業が始められそうです。
初摘み、一番摘みといわれる海苔ですが、有明海の海苔は福岡、佐賀がすべて支柱に海苔網をくくりつけ、海苔網の高さを調節しながら、干満の差を利用して日光に当てる時間を加減しています。
そうすることによって、海苔網にぶら下がっている海苔が紫外線を浴びて光合成をしながら、旨み成分を取り込んで生長するのです。海苔は空気中の一酸化炭素を吸収して酸素を吐き出す環境の浄化に大いに役立ってい一面も持っています。

11月末には全国で、新海苔が市場に出回り始めます。おいしい海苔を待っていて下さい。

@海苔網を満載した漁船が、漁場に着きました。
海苔の張り込み準備が始まります。
A漁船から小型の作業船に降ろした海苔網は3人で、海苔網をくくりつける支柱の間に流してゆきます。
B海苔網の下には海苔種が潜り込んでいるカキ殻をビニール袋に2個ほど入れてぶら下げてあります。袋に海水が入り海苔種は袋から飛び出して海苔網に付着して生長します。

C支柱の間に流された海苔網を支柱にくくりつけて、海苔網を固定します。


2012.09.22掲載

◎宮城県の海苔採苗(種付け)最盛期

東日本大震災による津波被害で、壊滅的な打撃を受けた宮城県下の海苔産地では、昨年
「みちのく寒流のり」を守ろうという海苔養殖漁家約60名が養殖に取組み、1億3千万枚と災害以前の5分の1程度の生産枚数でしたが、生産資材が乏しい中、共同作業で予想以上の生産数量を上げました。

 このような回りの海苔漁家の活動ぶりに刺激された人も多かったようですが、今漁期は、約130名の海苔漁家が新海苔生産に取組むことになりました。資金も資材もなくした漁家が多い中、1台の海苔製造機を4〜5人で使う共同作業方式で新海苔作りに取組むことにしています。

 9月7〜8日の2日間、宮城県の石巻湾、仙台市の漁協を尋ね、海苔養殖の準備に取り掛かっている現場を見て来ました。「災害の年は、気が重くて海苔作りどころではない状態だったが、去年のみんなの活動を見ていたら、なんとかやらねバという気になって、みんなで取組むことにした」と話していましたが、後継者の若い人達が、海苔採苗(種付け)作業にキビキビと動き回っていました。このような産地の活気に触れて、宮城県漁協で今年度の生産予想を聞くと「去年の3倍位になるのではないだろうか。3億5千万枚以上を見込んでいる」という返答でした。

 海苔の作業場を漁港近くの沿岸に作るか、内陸部に作るか−悩みも多かったようですが、訪れた日には、漁船を横付け出来そうにないくらい地盤沈下したり、地震で壊れた岸壁がそのままになった海岸に、作業場の建設が進んでいました。帰り際に「暑い日が続いていますが、新海苔を楽しみにしています。体に気をつけて下さい」と挨拶したところ「わざわざ来てくれて有難う。宮城の海苔が売れるように、宣伝頼みます」という返答が帰ってきた。
 「宮城産 寒流海苔」楽しみにしています

(写真1)直径6メートル近い鉄輪(通称・水車)ののり網30枚以上を巻きつけて回転させながら、水槽の中の海苔種苗を海苔網に付着させる方法。陸上採苗という。 (七ヶ浜花渕)

(写真2)沿岸に建てられている海苔を機械で四角に抄き上げる製造工場。岸壁は 地震で沈下したまま。海苔摘み船の着岸が大変だろうと思います。壊れた岸壁の 左隅には、カモメが羽を休めていました。
(七ヶ浜花渕)

(写真3)岸壁に建てられている、海苔の製造工場内部です。真新しい海苔製造機械が搬入されていました。工場内部がほぼ出来上がった頃から、その他の周辺機械を入れて、試運転が始まります。10月中旬まで掛かるという声も聞きました。(七ヶ浜花渕浜)
(写真4)共同工場4棟の建設が始まっていました。(東松島矢本地区)
2012.07.19掲載

◎豪雨に荒らされた有明海、新海苔時期控えて復旧急ぐ

7月11日から14日に掛けて九州北部地域を襲った豪雨は、全国一の海苔生産量を誇る有明海に流れ込む沖端川、矢部川の堤防を突き破り福岡有明海地区沿岸ののり産地に大きな被害を与えました。
雨の合間を縫って、水害に見舞われた、福岡・柳川市の中島町、羽瀬町、三橋町では15日から浸水家屋の跡片付けが行われていますが、腰から胸までの深さに流れ込んだ泥混じりの濁流が家財道具の多くを破壊しました。 道路に積み上げられた水没家財がトラックで運ばれる情景を見ると、家族の無念さが胸に沁みます。

鉄橋の橋桁に引っかかった漁船と奥に転覆した漁船が見える


有明海の河口に近い矢部川岸の堤防上に引き上げて係留されている海苔船を見ると、濁流に押し流されて転覆したり、重なり合ったり、川に押し出されて側のコンクリートの橋脚に引っかかり押し潰されたものも見えました。
さらに、河口岸に設置されていた桟橋が流されて消えていたり、漁期になると川岸に船を接岸して種付け用の海苔網を船に積み込む鉄製のクレーンがいつもの場所に見えなかったり、濁流の力で曲げられたりした姿を見ると、水の力が如何に強いかを思い知らされます。そして、一昨年3月11日の東日本大震災で見せ付けられた津波の力の大きさを想い出します。
18日現在、水害で全自動海苔製造乾燥機械が水害にあったのが何台あったのかは十分確認されていませんが、17日の福岡有明海漁連の緊急理事会で解かっている範囲の情報が出ていたようですが、桟橋、クレーンがそれぞれ10基以上、漁船が20隻以上、全自動海苔製造乾燥機械の浸水が40台以上(少なくとも40軒ののり漁家が大きな侵水被害に会っているということになります)ということで、これも早急に正確な調査が行われることになっています。
河川敷に引き揚げていた船も押し寄せられて重なっていました。

桟橋に建てられていたクレーンも水圧で倒れ曲がっていました。

海苔の漁期は9月から始まります。有明海では、9月上旬にのり網を張り込むための支柱を建てこむ作業を始めます。10月中旬頃からは、有明海に海苔網を張りこみ海苔の種付け(採苗)作業が始まります。8月末までには、海苔養殖の準備をしておかなければなりません。
有明海の矢部川、沖端川の河口には、上流から流された流木、橋、漁船などが数多く漂流しています。これも取り除かなければなりません。
桟橋が流され、クレーンも押し曲げられていました。
 海苔種を植え付けたかき殻が避難出来たのかなど、まだまだ多くの問題もあります。この被害修復を行いながら、新海苔シーズンに突入しなければなりません。厳しい酷暑の日々を過ごすことになるでしょう。

2012.07.12掲載

◎「佐賀市のり」PRに大隈侯が一役

佐賀県漁協の佐賀市支所(杉町省次郎運営委員長)は、かねてより企画中であった佐賀七賢人シリーズの「佐賀市のり」がこのほど完成、佐賀市から有明海産の上質海苔を全国にPR販売します。
シリーズ第1弾として、佐賀市水ヶ江生まれで、明治15年に東京専門学校(現・早稲田大学)を創立し、後に内閣総理大臣を二度に亘り歴任した大隈重信侯にご出馬願うことになりました。佐賀市の杉町運営委員長を始め「佐賀市のり」の消費促進に熱心な理事さん達が中心になって活動し、
「大隈重信侯生誕の地 佐賀市のり 佐賀県歴史人物シリーズ」というブランドを作りあげました。大隈家や早稲田大学を訪れ、それぞれに商標の許可を頂いたということです。
早稲田大学では、売店での販売支援を得ることになり、さらに、8月、2月に行われる早稲田大学学生の佐賀県フィールド学習のホームステイを佐賀市支所で引き受けることにしている積極的な取組です。
このような形の海苔産地PRを行っている地区は全国でも珍しく、佐賀市支所では、市内に学生と支所青年部との交流場所を設営することも考えているそうです。
販売される海苔は、佐賀県の海苔入札会で落札された上質の佐賀市産海苔を、落札した商社から購入して焼き海苔にしたもので、チャック付きアルミホイル包材に5枚封入したものを、桐箱に3袋入れた商品。 通常販売価格は、1箱2,500円(焼き海苔5枚入り袋・3袋入り・全形15枚入り)。

佐賀市支所の杉町運営委員長は「佐賀市の出身者で日本の各分野で基礎を築き上げた七賢人の遺徳を称えるに相応しい海苔作りを目指すためにも、こんご頑張って新たな企画を進めたい」と語っています。
◇お問い合わせは、
佐賀県漁協佐賀市支所
佐賀市嘉瀬町大字十五 1555の3
電話=0952−24−8171番

(注)「佐賀の七賢人」は、◇鍋島直正(佐賀藩の第十代藩主、佐賀医学館(現・佐賀県立病院好生館の原型設立)。◇佐野常民(佐賀市川副町生まれ。日本赤十字社の創始者)。◇島義勇(佐賀市生まれ。北海道、カラフト探検を行い札幌市の町作りの指揮者)。◇副島種臣(佐賀市生まれ。参議院議員、外務卿、内務大臣を歴任)。◇大木喬任(佐賀市水ヶ江生まれ。東京府知事、初代文部卿、司法卿、元老院議長を歴任)。◇江藤新平(佐賀市八戸町生まれ。廃藩置県を行う。司法卿など歴任)。◇大隈重信(略)。

2012.05.06掲載

海苔のお話し」(11)
◎海苔生産、昭和50年代に逆戻り

平成23年度の海苔生産は、4月30日で終漁する。4月末までに生産された海苔は、5月上旬に入札会を開き、産地の販売も終わります。
 この漁期は、全国第5位の海苔生産地宮城県が地震と大津波で壊滅的な被害を受けて、比較的被害が少なかった島影の海苔養殖漁家60名が宮城産「みちのく 寒流海苔」を求めている消費者に少しでも提供できるように努力するのが「生産者としての責任だ!」と立ち上がったのです。10月から4月一杯寒中の生産とはいえに汗水流して努力して来ました。
その結果、5月9日に最後の入札会を開くことにしていますが、この漁期に生産した海苔は、約1億4,500万枚。一昨年度(2009年度)までの宮城県の生産枚数は約6億8,262万枚でした。しかし、前年度(2010年度)は3月11日の大震災による大津波で、漁船、海上の養殖施設、沿岸の海苔製造設備のほとんどが流失し、無残な姿になりました(参照・「海苔のお話し」(5)(6)回に掲載)。
その結果、約3億9,306万枚と半減しました。今漁期(2011年度)の生産枚数は約1億4,500万枚と、さらに半分になり、一昨年度のわずか21%に止まっています。
冬の夜中に海苔摘みが行われる地区もあります(有明海で)
今漁期の全国生産枚数は、77億枚相当で終わりそうです。昨年度の全国生産枚数は約85億枚でした。昨年度は、全国の生産枚数の約半分を占めている九州・有明海の気候、海況が海苔養殖に都合の良い状態になり、豊作であっため、宮城県の生産減をカバーしたのです。しかし、今年は有明海の産地の気候、海況が海苔の生育には芳しくなく平年作でした。そのため、宮城県の生産減が、そのまま全国の生産枚数に反映されたのです。
海苔製造機戒で抄き上げられる海苔。1台1千万円以上
します。
宮城県では、今年10月から始まる海苔養殖について、この1年漁船や海苔養殖の海上施設資材、海苔生産機械などを助成金を得ながら数人がグループになり共同作業で何とか生産に取り組みたいと考えている人が160人位になりそうだということです。それでも、生産数量は一昨年までの半分以下だろうと予想されています。一昨年まで200人以上いた海苔養殖漁家の人数に戻るのは当分難しそうです。
 また、海苔の産地価格が安くなり、海苔養殖を止める漁家が毎年3桁の数字になっています。次の漁期も海苔養殖漁家の減少が増えそうです。そのような現状を考えると、こんご、全国の生産枚数約80億枚台を維持して行くのは難しくなりそうです。

この80億枚台という生産枚数は昭和50年代の枚数です。おいしい海苔をそれなりの価値のある値段で販売し、和食の価値ある食材として、安定して生産できる消費市場を育てることが、海苔産業界にとって、こんごの大きな仕事になるのではないでしょうか。消費者のみな様に、おいしい海苔を吟味して頂き、価値のある価格で販売を始めている、若い海苔問屋による「出張販売」の姿が見え始めています。お近くで「出張販売」の姿を見たら、是非立ち寄って吟味して、海苔についての若手の薀蓄(うんちく)を聴いてください。

2012.03.13掲載

海苔のお話し」(10)
◎手痛い宮城県被災の影響

 今年度の海苔生産もいよいよ終盤を迎えようとしています。 昨年10月から海苔養殖が始まり、11月から全国の産地で入札会が始まりました。以来4ヶ月が過ぎました。
前回は海苔養殖が始まって間もない時期で、11月の寒暖の差が激しく海苔養殖が難しい年になりそうだと書きましたが、その通りになり、12月末までに生産して入札会に出品された海苔の枚数は、全国で9億8,165万枚でした。前年の12月末の出品枚数は20億1,438万枚ですから、10億枚相当の減です。
その後の生産は海況も海苔が育つ海の状態になり、少し生産枚数が増えましたが、2月末は53億
5,189万枚でした。昨年同期が59億5,148万枚でしたから、約6億枚の減というところまで追いつきました。しかし、3月に入ると再び10億枚相当の差がつきそうな気配です。

 その大きな原因の一つに宮城県の津波被災による大きな被害が影響しています。ちなみに、宮城県の年間の海苔生産枚数は約7億枚で、全国第5位の生産地でした。その産地がほとんど無理だろうと
思われていたところ、約60名の海苔漁家がグループで海苔の生産を行っています。

写真は、23年11月21日に宮城県塩釜市で行われた初入札会場

宮城県海苔は「寒流のり」という名称で、地元だけではなく全国の海苔業者が仕入れています。
そのような需要者に「寒流のり」をたとえ1年でも欠かすことは出来ないと取組んでいますが、現在生産状態から見ると今年度は1億枚強に止まりそうです。

 そのことを考えると、約6億枚の生産枚数が抜けてしまうことになり、今年度の全国の生産枚数は、
73〜75億枚相当だろうと見られています。宮城県の生産状況が、国内海苔生産に大きな影響を与えることは避けられない状態です。宮城県で次の生産期にどの位の海苔漁家が再起してもらえるのか、ごんごの日本の海苔養殖漁業に大きな影響を与えることになりますので、注目しています。


2004年から2010年までの記事はこちら