節分と海苔巻き
 2月3日の「節分」の夜、「その年の恵方(その年の干支に基づいてめでたいと定められた方角)に向って、声に出さず、心に願い事を念じながら太巻きすしを丸かぶりすると、願い事がかなう」という言い伝えに習い、海苔巻きの丸かぶりのイベントやすし屋さん、弁当屋さんの太巻きずしの販売が盛んになっている。

 「このような風習が本当にあったのか」。「いつ頃から始まったのか」。「本当にご利益があるのか」という質問を受けることがある。
 そのような質問には、「あなたのお気持ち次第です」と逃げているが、風習としては、「江戸時代に大阪、和歌山、滋賀あたりで見られた風習である」と大阪の乾物問屋で聞いたことがある。
しかし、定かではないが、ただ、それを海苔の販売促進のため消費者に広く伝えようとしたのは、昭和28年頃の大阪海苔問屋協同組合といわれている。
 昭和48年の大阪海苔問屋協同組合のチラシには、「節分に−幸運の巻きずし丸かぶり 恵方 南南東」とあり、「節分の夜、恵方に向かって無言で家族そろって巻きずしを丸かぶり(丸ごと食べる)すると必ず幸福が回ってくる−と昔からいい伝えられています」と書いてある。すし屋さんに海苔を納める時に配っていたようである。
また、その頃は、大阪のデパートでも「2月3日 幸運巻きずし売り出し」とすし売り場に張り紙があった。
 これを海苔業界の街頭イベントとして宣伝するようになったのは、昭和52年頃からである。
昭和48年度は11月に生産される秋芽が近年にない豊作で産地価格も安くなったため、当時の
オイルショックによる物価高に対して海苔の安さを訴える街頭販売が、昭和49年1月26日、大阪・
道頓堀の「くいだおれ」前で行われ3年間続いた。そして、昭和52年から「節分の丸かぶり」を取り
入れた海苔PR「海苔祭り」が道頓堀で始められた。
このイベントがマスコミに取り上げられ全国に放送されたのが、全国主要都市の海苔業者による
「海苔祭り」で宣伝するようになり「節分に巻きずし丸かぶり」を大きく売り出すきっかけになった。