養殖海苔の生産
 

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水槽に保存しておいた海苔の果胞子を入れると、水槽に吊り下げられたかき殻に海苔の胞子が潜り込み、糸状に生長してかき殻が黒ずんできます。やがて、海苔の胞子がいつでも飛び出せるように生長すると、水温を調節しながら、海に海苔網を張り生長させる時期を待ちます。この調節はその年の海苔質の良し悪しを決める重要な作業です。
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9月に入って、決められた海苔養殖漁場の区画に、海苔網をぶら下げる支柱
(竹製とグラスファイバー製があります)を建て込みます。網の大きさは、幅1.8メートル、長さ20メートルで、1区画に8枚から10枚の網を張りこむためには、55本から66本の支柱を立てなければなりません。残暑が厳しい海上の作業はかなりの重労働になります。
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10月の初めには、養殖漁場の一角に種網を張り込む作業が始まります。
種網は、海苔網30枚を重ね、その網に小さなビニール袋に海苔の胞子が潜り込んで黒くなったかき殻1〜2個をいれて、網に30袋程度をぶら下げます。
養殖海苔写真3
   
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それを養殖漁場に船で運び、支柱にくくり付けながら広げて行きます。
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種網を張り込んだ状態ですが、30枚を重ねている海苔網の下にかき殻を入れたビニール袋が見えます。この状態で
満ちてきた海中に浸かり、ビニール袋に海水が入ると、かき殻の胞子が海中に飛び出して海苔網に付着します。このことを「採苗」と言います。
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採苗は2〜3日で終わり、かき殻を入れたビニール袋がはずされます。
海苔網に付着した海苔の胞子は、網にしっかり掴まり生長を始めます。
この時期を「育苗」と言います。海苔の生長を促すため、また網に付着する海中の汚れを落とすために海水をポンプで網に吹き付ける「網洗い」の作業が行なわれます。
養殖海苔写真6
   
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やがて、海苔芽が3〜5センチに伸びたところで、重ねて張り込んだ種網の半分を引き上げて陸上で乾燥させ、冷蔵庫に入れる作業を行ないます。これは、張り込んだ海苔網が海苔特有の病害で生長しなくなった時に張り替えるための「予備網」として、冷蔵庫に入れて保管するための作業です。写真のように天日乾燥した網は、ビニール袋に入れて、冷蔵庫に運びます。
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組合ごとに冷蔵庫を用意してあり、ビニールの袋に詰めた海苔網をプラスティックの箱に入れて、マイナス25℃に冷えた冷蔵庫の中で保管し、出番を待ちます。
これを「冷凍網」と言います。
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冷凍網分を取り外され、海に残された種網は3〜5センチに伸びているため、
海苔芽が順調に育つように1枚づつに広げて、養殖漁場いっぱいに広げて張り込みます。
種網として張り込まれた海苔網をそのまま育てて摘み取る網にするのを「秋芽網」と言います。
写真は、秋芽網を漁場全体に広げて張り込んだ風景です。
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海苔芽が15センチ〜20センチに伸びた頃から摘み始めます。これが「秋芽一番摘み」になります。日中の太陽光線を充分に受けて、光合成による栄養分を細胞の中に充分蓄えた海苔は、アミノ酸をたくさん含み軟らかくて甘みのある海苔に育ちます。太陽の光を充分浴びた海苔は、濃い赤味を帯びた海苔に見えます。
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海苔摘み作業は、夜明け前の暗いうちに始まったり、早朝の薄明るい頃から始められます。海苔の細胞が目を覚まし、光合成を始めて細胞が活発に動き始めると、細胞内の養分が少なくなるためとも言われます。それは、美味しい海苔を作る「生産者のこだわり」のようです。この写真は、撮影のため日が充分に昇るまで作業を遅らしてもらったものです。
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海苔摘みの小さな作業船(適採船)から、親船に運び海苔をポンプで吸い上げ親船の船倉に送り込み、再び適採船で海苔網に向います。
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摘んだ海苔は自宅の作業場に運び込み、大型の海苔製造機械(全自動海苔乾燥機)で抄きます。出来上がった海苔は、品質を揃えて箱詰めして漁業協同組合の品質と等級を検査するところ(検査場)に運びます。
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検査場では、持ち込まれたひと箱毎に熱心な検査が行なわれ、品質による格付(海苔のお話・「品質と等級」の項参照)を行い、その地域の海苔共同販売場に出荷されます。
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共同販売場には、その地域の共同販売(入札会)に参加できる資格を持った海苔問屋、海苔加工商品製造業者などが訪れ、必要な海苔の品定めをして、他の同業者との仕入れ競争に負けたくない価格を決めて、競争入札による買付が行なわれます。
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写真提供:アド大城